ドラマが始まる前に、原作:湊かなえの「Nのために」文庫本を読み終えたのですが、わたし自身の頭の整理のためにあらすじを書きとどめておこうと思います。
この先は、ネタバレになってしまうのですが、結末ではかなり衝撃的な事実が明かされます。
さすがの湊かなえ作品だと感じました。
物語は、時系列が現在から10年前、15年前のそれぞれのNの視点からから描かれているため、かなり複雑に感じます。
この原作をお読みでない方のためと、わたし自身の頭の整理のために出来るだけ完結にこの物語の出来事を整理して書いて行きたいと思います。
当然、ネタバレになりますので、ドラマの結末を知りたくない方やなど、読まなないようことをオススメします。
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▼事件の概要
1月22日19:20分、自宅マンションで野口貴弘、野口奈央子が他界した。
夫貴弘(42)は資産家の息子で、大手商社に勤めるエリート。
妻の奈央子(29)は夫貴弘の勤める会社の元受付で、現在は暮らしに何不自由ない専業主婦。
夫貴弘は後頭部から出血して倒れており、妻の奈央子は腹部に刺さった包丁が原因で亡くなっていた。
▼居合わせた人々
現場に居合わせたのは男女四人。
・夫妻と交流のあった女子大生の希美(22)
・貴弘の部下で、希美と共に以前から夫妻と交流のあった安藤(23)
・野口宅にケータリングサービスのために来ていた成瀬(22)
・花を届けに来た振りをして、奈央子を連れ出そうとしていた西崎(24)
希美、安藤、西崎は同じアパートの住人で友人同士。
成瀬は希美の高校のクラスメイト。
▼事件当日のパーティ
野口奈央子が最近電話に出なかったり、元気が無い様子だったので野口夫妻と希美、安藤で有名フレンチレストランのケータリングサービス(出張料理)を使って野口宅でパーティをする予定だった。
希美、安藤、貴弘の三人は将棋仲間。
貴弘は部下の安藤との対局に負けないため、希美に将棋の助言をしてもらっていた。
そのため、安藤に負けそうになっていた盤面の相談をするため当日は希美だけパーティ予定時刻より早く来てもらっていた。
パーティは19:00開始だが、希美は17:30前に到着。
安藤は19:00頃来ることになっていたが、思いのほか早く到着したものの、希美に勝ち方を教わろうとしていた貴弘にマンション屋上のラウンジにいるように指示される。
ケータリングに来る事になっていたのは希美の高校時代のクラスメイトの成瀬。
18:25分、西崎が奈央子を連れ出しに花屋に扮して野口宅を訪問した。
▼西崎達の計画
野口貴弘は妻の奈央子に普段から手をあげ、さらに妻の浮気の噂が耳に入ったためそのまま自宅に閉じ込めていた。
自宅の扉の外側にチェーンをかけていたため、交流のあった希美、安藤にもそのことを感づかれてしまう。
妻の浮気相手であった西崎は同じアパートに住む友人である希美らから事情を聞き、奈央子を連れ去る計画を立てる。
それが事件当日のパーティだった。
ただ、計画に加わっていたのは西崎、希美、成瀬の三人であり、安藤は一切知らなかった。
▼全員の証言
警察が現場に踏み込んだとき、西崎は亡くなった野口貴弘の近くで、銀の燭台を手に持って立っていた。
全員の証言を総合すると、西崎が妻の奈央子を連れ去ろうとしたのを夫の貴弘が感付き、西崎をKOした後で妻の奈央子に包丁を向け、そのまま腹部へ。
茫然と立っていた貴弘に、奈央子の仇を取るため西崎は銀の燭台を貴弘の後頭部に振り下ろした。
結果、西崎は逮捕され、懲役十年の刑を言い渡される。
現場にいた全員の証言には嘘が含まれていた。
それぞれが愛したNのために、相手がわからないような、相手を守るための嘘を。
野口夫妻が亡くなったのは、実は全て奈央子のした行為の結果だった。
奈央子は夫の貴弘からのDVを愛だと思い込み、希美はその夫を奪おうとしていると勘違い。
希美の彼氏だと思い込んでいた西崎を利用し、希美を夫から引き離そうとしていた。
夫の貴弘は希美から、今あなたの浮気相手が奥さんを連れ出そうとしていると告げ口される。
結果、貴弘は奈央子を守るため西崎に掴みかかり、奈央子は西崎を救おうとしていた希美が夫に花瓶を振り下ろそうとしているのを見て自分の夫に愛を示す(=相手を傷つける)のは自分だけだ!と、自分の手で夫の後頭部に銀の燭台を振り下ろし、そして自分の腹部にも包丁を…。
▼それぞれの嘘
野口奈央子は西崎真人を希美の彼氏だと思い込んでおり、夫:貴弘と希美の関係を疑い、希美を夫:貴弘から引き離す為に西崎を利用して嘘をついた。
貴弘は妻:奈央子に対する強い嫉妬と暴力を伴う愛情により、自宅に閉じ込め、皆に嘘をついていた。
西崎は愛した奈央子に罪を着せたくないために罪を被った。
希美は貴弘が部下の安藤望を僻地に飛ばす計画をしているのを知り、恩人である安藤を守るため、野口貴弘が西崎に怪我をさせて失脚すればいいと思い、西崎のことを貴弘に告げ口した。
安藤は自分が計画から外されていると感じ、いたずらのつもりで野口宅の部屋の扉の外側にあるチェーンを掛け、全員が外に出られないようにした。
そしてそのこと事を黙っていた。
成瀬はドアのチェーンが掛かっていた事や、西崎が犯人では無いと薄々感じていたがそのことを黙っていた。
▼10年後
西崎はおそらく出所。(ドラマ中では出所している)
希美は余命半年を宣告されて海の見える白い建物の病院に入院中。
安藤は僻地に行くこともなく、海外勤務で活躍している。
成瀬は地元にレストランを開く。
▼解説
それぞれがそれぞれ大切なNのためについた嘘。
この小説は、心理描写が凄く重要であり、その描写のひとつひとつを見逃すと、物語の展開自体が理解し辛くなる。
登場人物や時系列の視点が、次々と変わるため、頭のなかでつなぎ合わせていかないと解かり辛い。
全体としての話は凄く面白い。
しかし、誰が誰を愛しているというような直接的な描写がされていないため、登場者ひとりひとりの感情を掴みとるのが難しいと感じます。
希美には秘かに、究極の愛を誓った相手がいる。
西崎が「頭の中はそいつのことばかりなんじゃないか?」と言うシーンがありま。
その時点では、その相手が成瀬の事なのか、安藤の事を言っているのかがはっきりと判り憎い。
しかし、希美は究極の愛とは「罪の共有」だと言っています。
15年前、青景島で成瀬が他人の手に渡るはずだった実家の料亭を自身に手で放火した(と希美が思い込んでいる)とき、希美は必死に成瀬をかばった。
つまり、これこそが「罪の共有」ではないでしょうか。
希美はそのとき精神的に限界に来ていたので、成瀬が自分を救ってくれたと思います。
そして「罪の共有」をしたことで、究極の愛を持つに至ったのではないかと推測されます。
これが、罪の共有=相手に知られず相手の罪を引き受けるということに繋がって行くのだと思います。
その後、希美は父と愛人によって、母と弟と共に家を追い出された過去のトラウマから、異様に自立心が強くなります。
そして結婚もせず、子供も作りません。
おそらく希美にあのような過去がなければ、きっと普通に恋をして普通に結婚して…となっていたと思います。
作中では希美は男に囲まれているにも関わらず、誰とも恋人関係にはなりませんせした。
この希美の人物像や彼女の心象風景については別記事で書いていきたいと思います。
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